税理5月号への掲載記事

住所と居住をめぐる税務判断

OAG税理士法人
税理士 奥田周年
税理士 下見佐和子

居住用財産の取得・譲渡をめぐる「居住」の判断

ポイント

①住宅ローン控除の適用に当たり、やむを得ない事情のあるときは、取得者本人が居住しないケースでも特例を適用できる場合がある。
②住宅ローン控除の適用に当たり、災害等の事情で一時的に居住できないケースでも特例を適用でぎる場合がある。
③居住用財産の譲渡をめぐる「居住」の判断では、譲渡した物件に実際に居住していたかがポイントとなる。
④居住用に使用していた物件が2以上ある場合、どちらが生活の本拠であったかどうかの判断が必要となる。

■はじめに
居住用財産の取得・譲渡は、生活の本拠となる重要な財産の取得・譲渡であり、その課税に当たっても種々の特例がある(図表-1)。

■居住用財産の取得
◆住宅ローン控除

住宅ローン控除

居住者が、国内において新築住宅の取得(居住用家屋の新築を含む)や既存住宅の取得、又は自己の居住の用に供する家屋に増改築等をして、取得(新築)又は増改築の日から6か月以内に自己の居住の用に供して、適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住しているときは、その年分の所得税額から、住宅借入金等特別税額控除額を控除する。

この特例を受ける際の要件は、住宅を取得した人の人的要件、取得等した住宅の物的要件、住宅を取得した人の居住要件に分類される。以下では、おのおのの要件について「居住」を中心に解説する。


【2】住宅を取得した人の要件
この特例を受ける際に、住宅を取得した人の人的要件は、以下のとおりである。

①居住者であること
この特例は、居住者が住宅の取得等をした場合に適用があるため、非居住者が日本に帰ってきたときのために住宅を取得等した場合には適用がない。

ここでいう「居住者」とは、国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいい、「非居住者」とは「居住者」以外の個人をいう*2。
*2所法2①三・五(定義)

②適用年の合計所得金額が3,000万円以下であること
③住宅借入金等の年末残高があること

【3】取得をした家屋の要件
この特例を受ける際に、取得した住宅の物的要件は、以下のとおりである。

(1)住宅の取得先
住宅を取得した者の親族等以外からの取得であること。
この特例は、以下の者から住宅を取得した場合は、適用がない。

・住宅を取得した者の親族
・住宅を取得した者と婚姻をしていないが事実上婚姻関係と同様の状況にある人
・住宅を取得した者からの金銭で生計を維持している人
・上記の者と生計を一にするこれらの者の親族

したがって、居住している家屋を離婚により銀行借入金の負担付の財産分与で取得した場合、 婚姻関係を解消した後の取得は、親族等からの取得に該当しないため、この特例の適用がある。

給付者は、自宅の財産分与について譲渡所得の申告の必要があるが、親族等以外への譲渡のため、居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得の特例の適用を受けることのできる場合がある。

なお、離婚を前提として戸籍から抜ける前に負担付で財産分与を受けた場合は、親族等からの取得に該当するため、この特例を受けることができない。また、戸籍を抜ける前であれば、贈与税の配偶者控除を受けられる場合がある。

これらの特例の適用関係は、図表-2のとおりとなる。

財産分与

(2)住宅の用途

住宅の用途は、その家屋の2分の1以上に相当する部分がもっぱら居住の用に供されるものであること。なお、その者が居住の用に供する家屋を2以上有する場合は、主として居住の用に供する一の家屋に限られる。

例えば、平日は職場の近くに居住し、週末は田舎で居住するようなケースが想定される
(図表-3)。

住宅の用途

(3)家屋の床面積

特例を受ける家屋の床面積は、1棟の家屋の場合は、50㎡以上であること、区分所有建物の場合は、その区分所有する部分の床面積が50㎡以上であること。

(4〉家屋の築年数
特例を受ける家屋の築年数は、耐火建築物(鉄骨造,鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造等)の場合は、25年以内に建築されたものであること、耐火建築物以外の場合は、20年以内に建築されたものであること。

(5)増改築等をした住宅の物的要件
工事費の金額増改築等の工事費が100万円を超えること*3。
住宅の増改築等は、その者が所有する持家についての増改築等を促進することを目的としているため、この制度の対象となる増改築等は、その者が所有する居住用家屋についてされたものに限られる。

*3居住用部分の工事費が全体の工事費の2分の1以上であること

共有家屋に増改築等をする場合、その者の共有持分を超える部分については、他人の所有する家屋についての増改築等になるため、その共有を者の持分に応じた額のみが、この特例の対象となる*4。

*4水戸地判平16.1.27・平14(行ウ)28,さいたま地判平16.2.18・平15(行ウ)3,東京高判平16.6.29・平16(行コ)64

<事例>
既存住宅が、父持分2分の1、子持分2分の1で登記していたが、この家屋に父が銀行借入れにより1,000万円で増築をした(図表一4)。

この場合、父がローン控除を受けることのできる金額は、1,000万円のうち持分相当の500万円になる。

また、民法では、不動産(既存住宅)の所有者(父持分1/2,子 持分1/2)は、その不動産に従として付合した物(増築分)の所有権を取得することになる*5。
*5民法242(不動産の付合)

この場合、父から子に対し、持分相当の増築資金の贈与(1,000万円×1/2)があったものとして贈与税が発生する。

なお、既存住宅及び増築分について時価の比により持分を変更する場合は、子への贈与は発生しない。

既存住宅の父の持分相当の時価が500万円、子の持分相当の時価が500万円の場合、持分は、図表-5のとおりとなる。

増改築等をした住宅の物的要件

【4】住宅を取得した人の居住に関する要件
この特例は、住宅を取得した人がその家屋に取得又は増改築等の日から6か月以内に居住するという要件と、特例の適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住するという要件と二つの居住要件がある。そして、この居住要件を証明するために、この特例を受ける際には、確定申告書に住宅を取得した者の住民票の写しの添付が必要となる。

(1)住宅を取得した人が転勤で居住できなかった場合
その住宅を取得した人が、転勤,転地療養その他のやむを得ない事情によりその家屋に居住できなかった場合は、その配偶者,扶養親族、その他その者と生計を一にする親族が取得等又は増改築等の日から6か月以内に居住し、そのやむを得ない事情が解消した後はともにその家屋に居住すると認められるときは、この特例を受けることができる*6。

この場合、住宅を取得した人の住民票は,転勤先等に異動していることもあるため、その家屋の所在地が生計を一にする親族の住所地として記載されている住民票を提出することになる*7。

(2)災害による一部損壊のため引き続き居住できなかった場合
この特例は、住宅を取得等してからこの特例の適用年の12月31日まで引き続き居住の用に供している場合に適用があるが、災害による家屋の一部損壊により居住できない場合*8であっても、その損壊部分の補修工事等のため一時的に居住の用に供しない期間があったとしても、その期間は引き続き居住していたものとして取り扱われる*9。

(3)災害により適用年の12月31日まで居住できない場合
この特例は,住宅を取得等してからこの特例の適用年の12月31日まで引き続き居住の用に供している場合に適用があるが、年の中途で災害による家屋の全部損壊により居住できない場合は、居住できなくなった日まで引き続いて居住の用に供していれば、その年はこの特例を受けることができる*10。

*6措通41-1(居住の用に供した場合)
*7措通41-30(住民票の写し)
*8災害とは、震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、落雷、噴火その他の自然現象の異変による災害及び鉱害、火薬類の爆発その他の人為による異常な災害並びに害虫,害獣その他の生物による異常な災害とする(措通41-9)。
*9措通41-2(引き続き居住の用に供している場合)
*10措法41①(住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除)

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