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週刊「相続情報」

土地の売買契約中に相続が発生した場合

今回は、土地等の売買契約を締結してから引渡しまでの期間に売主又は買主にご相続が発生した場合についてのお話です。
売買契約締結時に手付金の収受は完了したものの残代金については未精算、所有権の移転登記も未済であり登記上の所有権は売主のまま、といった状況でご相続が発生してしまったようなケースです。
● 売買契約中の土地等は売主の相続財産になるのでしょうか?
● 同様に、買主にご相続が発生した場合にはどうなるのでしょうか?
● 財産及び債務の評価方法はどうするのでしょうか?

相続税の『財産評価基本通達』では、このような特殊な状況における財産評価についての明記はありませんが、課税庁においては、課税の統一を図るために、かつては『事務連絡(昭和48年1月19日付)』により財産評価上の取扱いを定めていました。しかし、その後同様の状況下における相続に係る財産評価について争われた裁決や判決等をうけ、現行では『国税庁資産税課情報第1号(平成3年1月11日付)』に定める取扱いに統一されているようです。その主な内容は下記のとおりです。

【売主が被相続人の場合】
(1)相続財産 <土地等は相続財産になりません!>
● 売買残代金請求権 ⇒ 売買代金のうち相続開始時における未収入金部分
(2)譲渡所得の課税の特例の適用
被相続人の準確定申告で譲渡所得を申告する場合(契約日を譲渡日として申告する場合)に、その譲渡が「特定の事業用財産の買換」の特例の適用要件に該当するときは、被相続人が生前に買換資産を取得していなくても、被相続人が死亡前に買換資産購入の売買契約を結ぶ等、買換資産が具体的に確定しており、相続人が法定期間内にその買換資産を取得し事業の用に供した場合には、特例の適用を受けることができます。
「収用等による代替資産を取得した場合の特例」 「特定の居住用財産の買換」についても、同様に被相続人が生前に代替(買換)資産を具体的に確定させているような場合には、特例の適用を受けることが出来ます。

【買主が被相続人の場合】
(1)相続財産 <土地等は相続財産とすることが出来ます!>
● 原 則:引渡請求権等 ⇒ 売買契約に係る土地等の取得価額(売買代金相当額)
● 特 例:土地等 ⇒ 財産評価基本通達により評価した土地の評価額
(2)相続債務
● 未払金(売買代金のうち相続開始時における未払金部分)
(3)小規模宅地等の課税の特例の適用
相続財産を特例により土地等として申告する場合に、その土地等が小規模宅地等の適用要件に該当する場合には、特例の適用を受けることが出来ます。

【具体例】
買主が被相続人の場合 具体例 図

● 売買代金:1億円
● 手付金:3,000万円(①支払)
● 残代金:7,000万円(③支払)
● 相続税評価額:8,000万円(②時点の評価額)

(1)売主が被相続人の場合
● 相続財産:7,000万円(売買残代金請求権)
※ 手付金として受領済みの3,000万円は別途財産(預貯金等)を構成
(2)買主が被相続人の場合
● 原 則
1億円(財産・引渡請求権)− 7,000万円(債務・未払金)= 3,000万円
● 特 例
8,000万円(財産・土地)− 7,000万円(債務・未払金)= 1,000万円

【注意点】
売買契約の内容によっては、停止条件付の契約のもの(農地売買の場合には、農地転用の許可又は届出がなければ所有権移転が出来ないなどの制限があります)、契約から引渡しまで長期間かかっているもの、特段の事情により後に契約が解除となったケースなど、個々の事情は様々です。
こういった特殊な状況下での相続について税務訴訟になった場合には、必ずしも現行の取扱いが支持されるとは限らず、又、過去において、新たな裁決や判決等により課税庁側の取扱い方法が変更されてきた事実もあります。
したがって、売買契約中の土地の相続申告については、個々の案件毎に個別事情に配慮した慎重な判断が必要とされます。