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週刊「相続情報」

いわゆる「ハンコ代」の税務上の取扱い

相続が生じ、亡くなった親の遺産を誰がどのように取得するかを決めるときに家督相続の考えがある家では、長男が遺産の全部を取得し、他の相続人には、遺産分割協議書にハンコを押してもらうためにいくらかの金銭(いわゆるハンコ代)を支払うことがあります。
この「ハンコ代」を分割協議書に記載しないお金で支払うか、分割協議書に記載したお金で払うかで、税金が変わってきますので、両者の違いについてご紹介します。

1.分割協議書に記載せずにお金を支払った場合
分割協議書に記載しないお金でで「ハンコ代」を支払うとは、例えば遺産分割協議書上、「親の遺産のすべてを長男が取得する」と記載し、後で他の相続人に金銭を支払う方法です。
この場合においては、それぞれ受け取った人について、その取得した「ハンコ代」については贈与税の対象となります。

税額計算の例

前提条件
被相続人 親
相続人 長男、二男、三男
相続財産 110,000千円
分割方法 遺産のすべてを長男が取得する。ハンコ代として長男から、
二男、三男にそれぞれ5,000千円支払う。


相続税額 110,000千円−80,000千円(基礎控除額)=30,000千円
30,000千円×1/3(法定相続分)×10%(相続税率)=3,000千円
3,000千円×3(法定相続人の数)=9,000千円

贈与税 (5,000千円−1,100千円)×20%−250千円=530千円
(注)贈与税の期限内申告をせずに、税務署からの指摘等により
申告した場合には、無申告加算税及び延滞税が上乗せされます。


税額合計 長男 9,000千円(相続税)
二男 530千円(贈与税)
三男 530千円(贈与税)
合計額 10,060千円

2.分割協議に記載されたお金で支払った場合
分割協議に記載されたお金で「ハンコ代」を支払うとは、代償分割により長男が他の相続人に代償金を支払う方法です。具体的には分割協議書において例えば「長男が遺産のすべてを取得し、その代償として他の相続人に○○円を支払う。」といった記載をすることです。

税額計算の例

前提条件 (分割方法以外は上記1と同様とします。)
分割方法 遺産のすべてを長男が取得し、この財産の代償金として、
二男、三男に対して各々5,000千円を支払う。


相続税額:総額9,000千円(計算方法は上記1と同様です。)
按分:長男 9,000千円×100,000千円(注)/110,000千円=8,181千円
(注)110,000千円(遺産総額)−5,000千円(代償金)×2
二男 9,000千円×5,000千円(代償金)/110,000千円=409千円
三男 9,000千円×5,000千円(代償金)/110,000千円=409千円


税額合計 長男 8,181千円(相続税)
二男 409千円(相続税)
三男 409千円(相続税)
合計額 約9,000千円


上記の1又は2の例のように、書面上の形式の違いにより納税金額が変わってくるこがあります。
また、代償分割は、例えば、遺産の中に土地が一つしかなく、その土地が居住しているものであるため、相続人間で分けることが難しい場合でも、土地をある相続人が取得し、その取得した相続人から、他の相続人に代償金(この場合は土地を取得した相続人の固有の財産を持ち出すことになります。)を支払うことによって各相続人が納得できる分割を実現できることもあります。
なお、代償分割又は贈与によるお金の支払いを数年にわたり分割で支払うときは、税金の計算上、支払う総額について一定の割引計算をした金額により、代償金又は贈与金額を計算することになると考えられます。

例:500万円を5年間で支払う(年利率1%の場合)。
100万円(代償金等の年額)×4.853(複利年金現価率)=485.3万円


税負担の減少を図り、また円滑な分割を実現するために代償分割を有効にご利用いただきたいと思います。