生前に財産を分割する方法
〜相続時精算課税制度の活用〜
相談者の甲さんの財産は、自宅と甲さんが社長を務める会社の株式(非上場)、そして駅前に駐車場敷地があります。中心は会社の株式です。その他には、4人の子供が自宅を建てるときに敷地を無償で貸してあります。会社については長男が後を継ぐことは決まっているのですが、いざ相続が発生した場合、子供同士がうまく財産を分けてくれるか、甲さんは心配されています。このような場合、何か良い方法はないかという相談でした。
大型の生前贈与と遺留分の放棄、遺言書の作成をセットで行う。
平成15年の1月1日からスタートした相続時精算課税制度を利用した大型の生前贈与、遺留分の放棄と遺言書の作成をセットで行うことをお勧めしました。
この制度の特徴は、従来の暦年贈与の非課税枠が年間110万円であるのに対し、2500万円まで贈与税ゼロ、それを超える金額は一律20%の課税ということです。そして、これらの贈与された財産は実際の相続時に相続財産に加算され、相続税を再計算します(支払い済みの贈与税は差引かれます)。
この制度は、使い方次第で遺産分割のトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
なお、相続時精算課税制度を一度選択すると、従来の暦年贈与の110万円の非課税枠は適用がなくなります(贈与者が異なる場合はOKです)。
以下、この制度の概要と活用法をご説明します。
1.相続時精算課税制度の概要
(1)贈与者と受贈者
この制度では65歳以上の親から20歳以上の子に対しての贈与について認められています。この場合の子には養子も入ります(養子は何人でもOKです)。
(2)非課税枠の金額
贈与の非課税枠は2500万円です。また、住宅を取得する資金の贈与を受ける場合は、この2500万円に1000万円上乗され合計3500万円になります。
(3)贈与財産の種類
贈与財産の種類は、上記(2)の住宅取得資金の場合を除き、何でもOKです。不動産でも有価証券でも可能です。
(4)相続時に支払う相続税
相続時に支払う相続税は次のようになります。

2.相続時精算課税制度の使い方
この制度は最終的には相続時に税金が精算されるので基本的には損も得もないことになります。それならわざわざ使わなくてもと考えられる方も多いと思います。しかし、上手く使えば、前述したとおり将来の遺産分割の争いを未然に防止することも可能となります。
(1)生前の財産分割が可能に
いざ、相続が発生すると遺産分割でもめるケースは枚挙にいとまがありません。そこで、本人が元気なうちに、例えば、一部のお子さんに財産を贈与し、その代わりに遺留分の放棄をしてもらい、残ったお子さん(ご質問の場合はご長男)に残りの財産を遺言で相続させるようにするわけです。生前に贈与を受けるお子さんについても、相続時に財産をもらうより、お金が必要な今、財産をもらいたいと考える方も多いのではないでしょうか。
(2)生前の贈与財産の例
例えば、ご相談のように現在お子さんの自宅の敷地が親所有であればその敷地を贈与します。その他にもお子さんが住宅を取得するための資金、住宅ローン返済のための資金、収益物件(アパート等)等が考えられます。
(3)将来の相続税の支払いのために
この制度を利用して生前贈与を受けた場合、相続時には相続税がかかってきます。負担する相続税のために、例えば、事前に契約者子、被保険者親、受取人子といった生命保険に入って相続税相当部分を保険金でカバーできるようにする、遺言書に「生前に贈与を受けた者に対して相続税相当分の現金を遺贈する」と記載する、などの工夫をされるのも良いかと思います。
相続時精算課税が節税につながるケース・自社株の贈与
相続時精算課税制度を利用して自社株を贈与した場合、相続時に相続財産に加算される価額は、贈与時の価額となります。
たとえば、贈与時の株価が5000万円の自社株を、相続時精算課税制度を使用して贈与した場合、相続時の株価が1億円に上昇していれば、その効果は、次のとおりになります。 ・贈与しなかった場合の相続税 →1億円(相続時の評価)×30%=3000万円
・贈与した場合の相続税 → 5000万円(贈与時の評価)×30%=1500万円 従って、将来的に贈与時より評価のあがりそうな財産については、相続税の節税効果があります。(逆に評価が下がった場合は、価値のない財産に相続税がかかることになりますので注意が必要です。)



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